脳卒中には、血管がつまる脳梗塞（脳血栓、脳塞栓）と血管が切れる脳出血の二種類があります。いずれも脳動脈の動脈硬化が大きな発症要因になっています。動脈硬化を進める要因は「生活習慣病」であり、これを危険因子（リスクファクター）と言います。これには高血圧、糖尿病、高コレステロール血症、心房細動、喫煙などがあります。脳卒中を防ぐには、とくに血圧を正常な範囲に保てるかどうかが重要な課題になります。
脳卒中を発症する患者さんの人数はたいへん多く、計算上では世界中で2秒に1人が発症し、6秒に1人が脳卒中で亡くなっています。発症していなくても、50才を超えると、脳には小さな梗塞や出血が見られることも多く、これが認知機能の低下にもつながります。
できれば発症する前に予防したいものです。心配な方はぜひ受診してご相談ください。
脳卒中とは
脳血管が破れる脳出血、脳血管が詰まる脳梗塞といった脳血管障害の総称が脳卒中です。障害により血液循環が阻害されるため、激しい頭痛、手足など体の片側の麻痺、ろれつが回らない・言葉が出にくいなど、障害の起こった場所によってさまざまな症状が現れます。ただし、微細な血管に起こった脳卒中はわかりやすい症状をともなわないこともあります。
頭部MRI検査では早期発見が可能ですから、適切な治療を行うことで重篤な発作の発症を防ぐことができますし、自覚症状のない段階で検査を受けてリスクを確かめ、効果的な予防につなげることもできます。
脳卒中の原因となる疾患
脳卒中を起こす原因によって、適切な治療が変わってきます。頭部MRI検査などで正確な診断を受けることで、侵襲のより少ない治療が可能になることもあります。そのためにも早期発見が重要です。
血管が詰まるタイプ
代表的なものに一過性脳虚血発作や脳梗塞があります。
一過性脳虚血発作
脳梗塞の前触れ発作として起こるケースが多い発作です。血管が詰まって脳梗塞と同様な症状が現れますが、ほとんどは1時間以内に症状が治まり、長くても24時間以内に治まります。できるだけ早く適切な検査と治療を受ける必要があり、放置していると脳梗塞を起こすリスクが高くなってしまいます。症状がなくなったからと油断せず、すぐに受診することが、その後の重篤な脳梗塞発作を起こさないためにも重要です。
脳梗塞
脳の血管が詰まってしまい、その先の神経細胞への血流が滞ることでさまざまな症状を起こします。原因には、生活習慣病などによる動脈硬化で起こる血管の狭窄、血栓による詰まりなどがあります。主な症状は、体の片側の麻痺、体に力が入らなくなる、舌がもつれる・呂律が回らなくなる、めまい・ふらつき、片目がよく見えないといった視力障害などがあります。
血管が破れて出血するタイプ
代表的なものに脳出血やくも膜下出血があります。
脳出血
脳動脈が破れて出血し、神経細胞を障害している状態です。特に多いのは高血圧など生活習慣病による動脈硬化が進行して起こる脳出血です。主な症状には、突然の激しい頭痛、体の片側の麻痺、吐き気や嘔吐、意識消失・混濁などがあります。
くも膜下出血
くも膜は脳全体を覆う膜で、動脈が瘤状に膨れた動脈瘤が破裂してくも膜の内側で出血を起こしているのがくも膜下出血です。脳卒中の中でも特に死亡率が高く、重篤な症状を残してしまうケースも多い疾患です。破裂していない脳動脈瘤には自覚症状がありませんので、頭部MRIで破裂前に発見し、適切な治療を受けることが重要です。
脳卒中の症状
- 手足や顔面など体の片側に起こる痺れや麻痺
- 体に力が入らない・動けない
- ろれつが怪しい、言葉が出にくい
- 片方の目が見えない
- ものが二重に見える
- めまい・ふらつき
- 頭痛が徐々に強くなっていく
- 経験したことのないほど激しい頭痛
- 意識が遠くなる
こうした症状が1つでも現れたら、すぐに当院までいらしてください。また、「体を動かせないほど激しい頭痛」や運動麻痺などの症状が突然起こった場合には、「＃7119 (救急相談)」に電話をして救急車を呼ぶべきか相談してください。
＃7119（救急相談）について
急な病気やケガをした場合に、「救急車を呼んだほうがいいのか」「今すぐ病院に行ったほうがいいのか」など迷った際の相談窓口として「東京消防庁救急相談センター」があります。
医師、看護師、救急隊経験者等の職員がチームになって24時間年中無休で対応しています。
携帯電話、PHS、プッシュ回線のいずれも「＃7119」でつながります。または、東京版救急受診ガイドはネットで情報を得ることができます。（https://www.tfd.metro.tokyo.lg.jp/tfd/hp-kyuuimuka/guide/main/index.html）
